ミニシアター系映画が好きだ。
ここで言うミニシアター系映画は、全国ロードショー系のように一般的な映画館では上映されない、比較的マイナーな新作映画および過去の名画を指している。映画フリークには言わずもがなの一大ジャンルだろう。

その存在を知ったのは高校生の頃、当時富山で唯一ミニシアター系映画を上映していた総曲輪通りの映画館、フォルツァ総曲輪でビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』を観て衝撃を受けたことがきっかけだった。

 

粋がりたい高校生に貴重な映画体験をくれた、フォルツァ総曲輪というミニシアター

当時の私の粋がりぶりといったら、思い出すことすら恥ずかしいくらいなのだけれど…。
初めて『ミツバチのささやき』を観た時の体験は、
「一般受けはしないだろうけど、私はこういう映画を求めていたんだ!」
「こんなマイナーな映画の良さを理解できちゃう私って…。」
…といった風に、禁断のドラッグのごとき快感と優越感をもたらした。→参考黒歴史:当時の感想

それに味を占めて、2回目に観に行ったのがジム・ジャームッシュ『リミッツ・オブ・コントロール』。これまた、「高校生でここに通っているのは私くらいのものだろうな…デュフフッ。」などと、気持ちの悪い笑みを漏らしながら…。

ただ、動機はそんな感じで少々不純だったかもしれないけれど、思春期という時期に初めて観たミニシアター系映画がこの2本だったのは、とても幸運だったと今でも思っている。

どちらも、好きなミニシアター系映画のベスト5には間違いなく入るし、映画だけでなく、本などのフィクション作品における私の趣向の根幹をなしていることは確かだからだ。事実、この2本をきっかけに、大学時代に上京していた時もここぞとばかりに東京の各ミニシアターに足を運ぶような立派な(?)映画好きになったのだし。

ともあれ、そんな貴重な体験をもたらしてくれたフォルツァ総曲輪には、大手シネコンしかない富山県の中で唯一のミニシアターということもあり、相当の思い入れがあった。

東京から帰ってきてからも、足繁くというほどでもないけれど、2年間で5本以上はフォルツァ総曲輪に観に行った(たまに金沢のシネモンドに浮気したけど…)。

…が、去年、もっと通っておけばよかったと後悔する事態になった。
フォルツァ総曲輪が休館になってしまったのだ。しかも無期限で。

 

J-MAX THEATERとやまの開館、フォルツァ総曲輪の休館、ほとり座の誕生

フォルツァ総曲輪が休館した原因のひとつは、すぐ近くのユウタウン総曲輪という再開発施設に大きなシネコン、J-MAX THEATERとやまが開館したことだと言われている。

私からすると「いや、シネコンに観に行く層とミニシアター映画好きってたぶんそんな被ってないし、流動とかしないでしょ」というツッコミはあったけれど、まあ想像するに、前からフォルツァ総曲輪の客の入りがあまりよくないという状況で、再開発を言い訳に富山市が補助を打ち切ったということなのだろう。

かくして、富山県からミニシアターは消えた。

映画にそこまで興味のない人にとってはどうでもいいことだったかもしれないが、富山におけるミニシアターの唯一の希望として、フォルツァ総曲輪のことを「よくぞこんな田舎で」と誇らしく思っていた私にとっては、かなりショッキングな出来事だった。正直なところ、この一件で富山に対する故郷愛でさえも大きく損なわれた、と言っても過言ではなかった。

…まあ、フォルツァ総曲輪休館から2ヶ月も経たないうちに、代わってミニシアター系映画を上映するシネマカフェ「ほとり座」が近くの中央通りにできたことで、その溜飲はいったん下がることになるんだけれども。

 

富山という田舎にミニシアターが存在することの意味

確かに、「こんな小さな地方都市にミニシアターひとつあったところで、ほとんどの人は親しみやすい娯楽という観点で映画を求めているのだから、シネコンがあればそれで十分だろう」「ニーズに即しているだけ」という言い分ももっとも言えばもっともだ。

さらに言えば、J-MAX THEATERとやまのことだって、そこまで悪しざまに言うつもりもない。シネコンながら、1ヵ月に1本ほどミニシアター系映画の枠もあるようで、実際去年は『裸足の季節』を観に行ったし。あと、その時に館内の様子を見ていたら、高校生がとても多い印象で、あー確かに交通機関が整ってるところにシネコンがあれば学生も来やすいし、それが高校生がいろんな映画を観る機会に繋がっているっていうのはいいことだな、と思ったりもしたし。

それに「そんなにマイナーな映画が観たいなら金沢か、もっと都会へ行け」、というのも…。はい。実際行きましたシネモンドに。「いいもん! 富山がその気なら、お望み通り金沢に観に行っちゃうもん! 止めても無駄なんだからねっ!」などと、ケンカした当てつけに浮気する彼女めいたムーブをかましつつ。

でも、それでも、県にひとつでもミニシアターがあることで、私のようにミニシアター系映画というジャンルを知り、それをきっかけに映画ひいては芸術の世界にのめり込む人がひとりでも増えるのであれば、それはとても価値のあることだと思う。

逆に言えば、富山で映画館で映画を観るぞ! となった時に、全国ロードショー系しか選択肢がないというのは、とてもさみしいことだと思う。過去の数ある名画や洋画、若手監督の新作など、本来映画界はもっともっと豊穣で、色んな趣向の人を受け入れる寛大さがあるはずなのに。…え? TSUTAYA? お前富山のTSUTAYAの品揃え見ても同じことが言えんの?

映画に限らず、こうしたマイナーな芸術ジャンルの環境の違いは、田舎と都会の対比としてよく語られるように思う。(そういえば、エンジン01 in 富山で、安藤和津さんが富山に映画館が少ない現状に言及していたっけ)

そう、文化の豊かさでは田舎は都会には到底敵わないし、田舎がその豊かさを模倣することが好ましいかどうかについては、議論の余地もあるだろう。

だけどその中でも、フォルツァ総曲輪やほとり座のようなわずかな希望に期待しながら、こうして富山を選んでいる人間だっているんだぜ、ということは、声を大にして言っていきたい。

 

シネマカフェという新しい形態、ほとり座で映画を観てみて

…なんつって、ちょっと真面目な顔して書いてはみたけれど、まあつまりは映画に興味ある人は、ぜひほとり座に行ってみてね!!! ということですよ。

この前一度オタール・イオセリアーニ『皆さま、ごきげんよう』を観に行ってみたけれど、すごーくいい雰囲気のカフェの中でコーヒー片手に鑑賞できて、あれはなかなかない映画体験だった。(チキンを発揮して店内の写真はあんまり撮れてません…すみません…。サムネイルの写真は2階にあるほとり座に上がる階段のところにあった、素敵なライティングです)

もちろん映画館ではないので、防音設備とかはなく、「外の環境音が聞こえることがあります」と上映前に断りが入っていたけど、私はぜんぜん気にならなかった。音響設備については、どうだろう、今回はそうでもなかったけど、もっとBGMのある作品だと違いを感じるのかな。あとは唯一、あの包み込むようなシアター椅子ではない普通の椅子だから、ちょっとお尻が痛くなったくらいかな。

もの珍しさでも全然大丈夫だと思うので、ぜひ気になる映画があったら、なくても! 観に行ってみてくださいね。富山でのミニシアター系映画の振興のためにもね! お願いします! 頼む!!!

 

HOTORI×ほとり座
〒930-0044 富山市中央通り1-2-14 三笠ビル2F
シネマカフェ利用料金 (全てドリンク付き):
一般 1600円
シニア(60歳以上) 1300円
大学生 / 専門学生 1300円
中高生 1000円
小学生以下は入店無料(300円のドリンク代のみ)
WEB:http://hotori.jp/