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長い長い夢から醒めて続く言葉の—interior palette toeshoes
1st Full Album『.』感想

REVIEW

2019.09.16 update.

前回の記事の通り、いろいろな過程を経た結果大変光栄なことに、富山が誇るインストバンドinterior palette toeshoes(以下interior)の活動17年目にして初のフルアルバム、『.』の発売を機にTOKEI RECORDSのWeb制作のご依頼をいただいたのですが、
さらに大変感激なことに……! なんと6/19の公式発売の数日前に直接手渡しでアルバムをいただき、世間に先がけて拝聴するという貴重な機会に恵まれました。

interior palette toeshoes『.』Release情報
Online Shop

もちろん、そのことを抜きにしても、長らく追っかけをしてきたバンドの待望の1stフルアルバムとあって、発表時からそれはもう楽しみで楽しみで待ちきれず……。当然のごとく、いただいて即ヘビロテしてじっくりと聴かせていただきました。

……にも関わらず、思い入れが強すぎるあまり私ごときの言葉に落とし込んでしまうのがもったいなくて、3ヶ月近くもの間ひと言の感想すらつぶやけておらず大変申し訳なかったのですが、
(あと見苦しく言い訳をすると、長引く梅雨の低気圧と酷暑と私事のゴタゴタが重なって文章を書く気力がGo outしていたということもありましたが…)

9/29(日)にinteriorのレコ発ライブ in MAIROが控えていることもあり、その宣伝も兼ねつつ、
この美しい音楽を多くの人に伝えたい! と奮い立ち、この記事を書いた次第です。

まだ聴いていないよという方ももう聴いたよという方も、下記のインタビュー記事と合わせてぜひご一読いただいて、よりinterior palette toeshoesに興味を持っていただければと!

 

印象的なタイトルと真っ白なジャケットに隠れたメッセージ

さて、まずアルバムのタイトルからして印象的な『.』ですが、これには、ジャケットデザインも合わせて一貫したコンセプトがあり、それに関してはぜひこちらのRELEASE情報ページで読めるinterior palette toeshoesのメンバー自身のメッセージを読んでいただきたいです。できればアルバムを聴く前に。

さらに、一見真っ白でシンプルなこのジャケット、手に取ってみないとわからない、「なるほどこうきたか」となる仕様が隠れているのですが……どんな仕様なのかは、ぜひ購入してご自身の目で確かめてみてください(ダイマ)。

 

ある種のアバンギャルド的な「鋭利な切れ味」は健在

前回EPをリリースしてから実に9年ぶり…ということで、音楽性がかなり変化していたとしてもおかしくない時が経っているのですが、私がインテリアの前作までに感じていたある種のアバンギャルドな「鋭利な切れ味」は、1曲目「suidicial disco!」の重低音や、各所にさしはさまれる不協和音やノイジーなギターの轟音等々、今作でも健在でした。

 

(追記: Mikikiのインタビュー記事によると前回のEPリリース以前からの曲も収録されているそうです。なるほどどうりで……。)

こう書くと、インストやポストロックにありがちないわゆる「とっつきにくさ」が際立っているように思われるかもしれませんが、
後述の理由により、これらの要素はスパイス的にほどよい刺激をもたらしているので、
もともとinteriorのこの音楽性が好きな人はほくそ笑み、初めて触れる人には新鮮に感じられる、
絶妙なエッセンスとして作用しているのではと思います。

 

マスロック的なアンサンブルの楽しみが増し、よりド直球な「気持ちよさ」を追求した演奏に

そして今回、もともとインテリアの特徴として薄らと感じていた5パートの絡みによるアンサンブルの楽しみがより増して、いよいよ頭角を表してきたと思うのです。めちゃくちゃ噛み砕いて言うと映えです。ライブ映え。

「あ~ここのギター/ベース/ドラム/ピアノかっこいい〜〜これライブで演ったらもっともっとかっこいいだろうな~~~各パートがライブでどう絡んでくるかも楽しみ~~~〜」
と思わず悶えてしまうような。マスロックが好きな人の萌えポイント(?)にも割と近い感覚かもしれません。

しかも、前作まではそういったアンサンブルや演奏の「気持ちよさ」に対してストイックな面もあり、かなりひねった形での快楽を提示していた印象があったのですが、
今作ではその「気持ちよさ」に対して割とド直球で、ロックを愛する人にとってはある種普遍的、根源的なバンドサウンドの魅力を感じられるのではないかと思います。

 

17年目にして初のフルアルバムであり、17年間の音楽活動の集大成

先ほど「前回EPをリリースしてから実に9年ぶり」と書きましたが、ここ数年interiorメンバーのinterior以外での活動もずっと追いかけていた私としては、そこで得た音楽性が少なからず今作『.』にも良い影響を与えているのではないかと推察します。

具体的には、interiorメンバーのうち2人が参加しているエレクトロニカ/ポストロックバンドsmougの、あたたかみのある電子音と空間的なギターからなるリズミカルかつ洗練されたサウンドは、4曲目「a pig of the treason」などの、縦ノリを取り入れながらBGMとしても有用な緻密な音構成に通ずるところがあるし、

interiorのピアニストmiyoさんのソロプロジェクトmeimeiのノスタルジックなポストクラシカルサウンドは、今までのinteriorの曲にありそうでなかった、大部分がピアノメインの5曲目「1227」や7曲目「vase」に生きているように感じます。

言わば、今作『.』はinterior結成17年目にして初のフルアルバムであり、interiorメンバーのinterior以外での活動も含めた17年間の音楽活動の集大成。

そしてそれは、今までのinteriorの音楽性に(誤解を恐れずに言うと!)ポップス的な煌めきを纏わせ、インスト/ポストロックリスナーはもちろん、その周辺の比較的ライトなリスナーにもアプローチできるような「耳あたりの良さ」を生み出しているのではないかと、そう確信しつつあります。

 

数年来のinteriorファンの個人的なおすすめ曲は……

静と動/轟音系ポストロックが大好物で、そのことをきっかけにinteriorを知りファンになった私としては、何と言ってもその真骨頂、2曲目「kiki」は欠かせません。
もうこれに関してはとにかく聴いてほしいとしか言いようがない。『.』はもちろん、ライブも。絶対。
よせてはかえす激しく美しい音の波に、ぜひ遥か高みまで連れ去れられてください。

※こちらのMVで「kiki」の中編まで聴けますが、この後さらにヤバいことになるので必ず!!! 音源およびライブで全編聴いてください!!!!!

そして、もうひとつ、「kiki」と並んで個人的におすすめなのは、6曲目「J.M.」の中後編の展開。特に、終盤の痛いほどに切ない「泣き」のギターの旋律と、それに対し光が降りかかってくるようにかぶさるピアノの音が狂おしいほどにすきなのです。これもぜひ、ライブで聴いてみたいなぁ……。

 

9/29(日)の『. 』レコ発ライブ in MAIROが楽しみすぎる

interiorを知った大学時代からの数年来のファンとしては、『.』の音源を聴いているだけでもすでに感無量なわけですが、やはりポストロックバンドにおいてもはや「これを観ずには語れない」のがライブであり、interiorももちろんその例外ではありません。

そして、その待望の『.』レコ発ライブが、来たる9/29 (日)、富山県が誇るライブハウスMAIROにて開催決定しています! 詳しくは下記のリンクにて。

2019.09.29.SUN/interior palette toeshoes『.』Release Party@富山 MAIRO

TOKEI RECORDSの「いつメン」general fuzz sound systemとfilm.も出演する上、interior palette toeshoesおよびfilm.からの脱退が発表されている、ベースのワカスギ氏を交えた現メンバーでの最後のライブということもあり、富山県民はもちろん県外の全ポストロックリスナーにも全力でおすすめしたい超貴重なライブ。 リミックスCD付の前代未聞の有料フライヤーと合わせて要!チェック!!!です。

いつだってチャレンジングな取り組みをしているのが、interior palette toeshoes。今後の活動も、ますます目が離せません。